幸せなおっさん
あれはお盆の前後だったろうか。夕立のような激しい雨が止んだ夜、まだ早い時間から機嫌よさげに千鳥足で歩道を行くスーツ姿のおっさんを遠目に眺めながら、私は公園で犬を散歩させていた。おっさんがふらふらと車道に出たりしないかと心配で、私の視線は、犬と彼を行ったり来たり。

何度目かに目をやったとき、そこにはおっさんの姿はなかった。見晴らしのいい歩道、おっさんの足取りではそんなに進めるハズはない。まさか、転んだのではあるまいか。見ず知らずながら、ひどく気になる。帰りたくないと抵抗する犬たちを引きずって、私はその辺りへ向かった。街灯は車道も歩道も明るく照らすが、やはりおっさんの姿はない。

突然、歩道へ続く芝生に、黒い塊が見えた。おっさんだっ。
どうした?倒れたか?意識はあるか?

恐る恐る彼に近づく。暴れないとも限らないし、安全であろう距離は保ったまま、上体だけ乗り出して私は大きな声で呼びかけた。「大丈夫ですか~っ?」
状況によっては救急車が必要かも。手には携帯をスタンバイして、緊張して返事を待つ。・・・・・・反応がない。もっかい呼びかけて待つ。犬たちも興味津々でおっさんを覗き込む。

と、おもむろに、「大丈夫~、今ね~、ゆっくり休んでんの~」とご機嫌な返事。よく見ると、ご丁寧にブリーフケースを枕代わりにしている。なんとノンキな。でも、いかった。ノーマルな酔ッパライだった。「芝生がびっしょり濡れてますから、気をつけてくださいね~」と声をかけて立ち去ろうとした私の背後に、やっぱりご機嫌な声が飛んできた。「わんちゃ~ん、ありがとね~♪」
振り向くと上体を起こして、にこやかに無邪気に手を振るおっさんの姿があった。

おっさんっ、声かけたのは人間のほうなんですけどっ!

(妻)
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by noru_nao | 2006-08-24 10:51 | 妻のあれこれ | Comments(1)
Commented by 事務局長 at 2006-08-24 23:50 x
今度、このおっさんと犬君たちの3人で酒盛りさせたら、面白いかも知れない...。
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